宇宙はどこから始まる?高度100kmの境界線

飛行機でどこまでも昇っていったら、いつか宇宙に出られるのでしょうか。じつは空気は急に終わるのではなく、だんだんうすくなっていくだけ。それでも世界の多くの国が「ここから宇宙」と決めた高さがあります。高度100km、カーマンラインの話を、一緒にたどってみましょう。

  • カーマンライン
  • 宇宙の境界
  • 高度100km
  • 大気圏
  • ISS
宇宙の黒を背景に、地球の曲面と薄く青く光る大気の層を捉えた写真

かんたんな答え

まず結論から

宇宙との境界は、ふつう高度100km

この高さは「カーマンライン」と呼ばれ、多くの国際機関が航空と宇宙の境としています。ただし空気は急に終わるわけではなく、境界は“目的に合わせて引いた約束の線”だと考えるとしっくりきます。国によっては約80kmを使うこともありますよ。

もくじ
  1. 高さごとに、空はどう変わる?
  2. なぜ100kmが境界なの?
  3. よくある誤解
  4. よくある質問

高さごとに、空はどう変わる?

高度ごとの大気と代表的な目印
約10km旅客機が飛ぶ高さ。雲のほとんどはこの下にあり、空はまだ青く見えます。気圧は地上の4分の1ほどまで下がっています。
約10〜50kmオゾン層をふくむ成層圏。空気は急速にうすくなり、空の色は濃い青へ変わっていきます。
約100kmカーマンライン。多くの国際機関が「ここから宇宙」と定める高さです。空気は飛行機の翼で飛べないほどうすくなります。
約400km国際宇宙ステーション(ISS)が回る高さ。すでに宇宙空間ですが、わずかな空気の抵抗を受け続けています。

数字はおおよその目安です。大気の層に明確な境はなく、高さとともになめらかに変化します。

高度100kmのカーマンラインを境に、翼で飛ぶ領域と軌道で回る領域を分けた図解
図:高度が上がるほど空気はうすくなり、ある高さで「翼で飛ぶ」より「軌道で回る」ほうが理にかなう。

なぜ100kmが境界なの?

  1. 空気は急に終わらず、だんだんうすくなる地表から上へ行くほど空気は連続的にうすれます。目安として、空気の圧力はおよそ5.5kmごとに半分になっていくほど。標高3776mの富士山の山頂でも、気圧はもう地上の約6割まで下がって、少し息苦しく感じるほどなんです。それでも「ここから先は真空」という壁はどこにもなく、層はなめらかにつながっています。だから境界は“どこかで線を引く約束ごと”だと考えると分かりやすいですよ。
  2. 国際的な目安が高度100km(カーマンライン)航空と宇宙の境を決めるとき、世界の多くの機関は高度100kmを使います。これは「翼の揚力で飛ぶより、衛星のように回るほうが理にかなう高さ」としてカーマンが見積もった値に由来します。空気がうすくなるほど翼が生む揚力は小さくなり、飛び続けるにはどんどん速く飛ぶしかありません。やがてその速度は地球を回る軌道速度(秒速約8km)に近づき、“飛ぶ”より“回る”世界へ移っていくんです。その入れ替わりのめやすが、ちょうど100kmあたりでした。
  3. 国によっては80km(約50マイル)を使うアメリカの一部機関は、より低い高度約80kmを越えた人を“宇宙飛行士”と認めます。境界は1本ではなく、目的によって複数あると考えておくと混乱せずにすみますよ。たとえば同じ飛行でも、80kmを基準にすれば“宇宙に行った”ことになり、100kmを基準にすれば“まだ手前”になることもあるんです。数字が食いちがっても、どの目安の話かを確かめれば、ちゃんと納得できますよ。
宇宙の境界として使われる高度約80kmと100kmの二つの目安を比較した図
図:国際的には100kmが広く使われる一方、米国の一部機関は約80kmを目安にする。境界は目的によって異なる。

よくある誤解

明るい机の上で、透明な筒の中の白い粒が下ほど密で上ほどまばらになる模型と、青から濃い青へのカードを並べている。
「ある高さを越えたら、急に真空になる」わけではない

境界は壁ではありません。空気は上空までうっすら続き、ISSの高さでも完全なゼロにはならないんです。「宇宙の入口」は、人が決めた便利な目印だと考えておくと、いろいろな定義が並んでいても戸惑わずにすみますよ。

  • 境界は1本ではない——国際的には100km、米国の一部は約80km。
  • 青空が黒くなるのも連続的——高く昇るほど散乱する光が減って暗くなる。
  • 宇宙に出ても“無重力”ではない——詳しくは人工衛星の記事へ。

よくある質問

宇宙と空の境目は具体的に何kmですか?

もっとも広く使われる目安は高度100kmの「カーマンライン」です。国際航空連盟(FAI)などがこの高さを航空と宇宙の境界として用いています。一方でアメリカのNASAやアメリカ空軍は、より低い高度約80km(約50マイル)を越えた飛行を宇宙飛行とみなすことがあり、境界の定義は一つではありません。

なぜ高度100kmが境界に選ばれたのですか?

技術者テオドール・フォン・カルマンの見積もりに由来します。高く昇るほど空気はうすくなり、翼で揚力を得るには猛烈な速度が必要になります。ある高さを境に「翼で飛ぶより、地球を回る軌道速度で飛ぶほうが現実的」になります。その目安がおよそ100kmだったため、宇宙の境界として広まりました。

ISSは宇宙にあるのに、なぜ少しずつ落ちてくるのですか?

高度400km付近にもごくわずかな空気が残っているためです。完全な真空ではないので、ISSはわずかな空気抵抗を受けて少しずつ高度を下げます。これを補うため、定期的にエンジンで高度を持ち上げる「リブースト」を行っています。

飛行機で宇宙まで行けますか?

ふつうの飛行機では行けません。高く昇るほど空気がうすくなり、翼が揚力を生めなくなるからです。宇宙へ出るには、空気にたよらず自力で加速し続けるロケットの推力が必要になります。これがまさにカーマンラインの考え方です。

宇宙ではなぜ空が黒く見えるのですか?

地上の空が青いのは、太陽の光が空気の粒にぶつかって散らばり(散乱)、青い光が四方へ広がるからです。高く昇るほど光を散らす空気そのものが減っていくので、昼間でも空はだんだん暗くなり、やがて黒に近づきます。宇宙で空が黒いのは“夜だから”ではなく、光を散らす空気がほとんどないためなんです。だから宇宙空間では、空は昼でも黒いままで、星はいつもそこにあります。ただし太陽に照らされた明るい側では、目がまぶしさに慣れてしまい、肉眼では星がとても見えにくくなります。

カーマンラインの100kmは世界共通で決まっているのですか?

法律で完全に統一されているわけではありません。国際航空連盟(FAI)は記録を扱ううえで高度100kmを境界としていますが、宇宙活動の基本ルールを定めた国連の宇宙条約には「宇宙はここから」という具体的な高度は書かれていません。そのため国や機関によって約80kmや100kmと目安が分かれます。100kmはもっとも広く使われている“事実上の共通の目印”だと考えるのが、ちょうどよいですよ。

出典

本記事の数値・定義は、以下の一次情報をもとに記載しています。

この記事を書いた人

コペミル編集部星空ソムリエ

YouTube・TikTokで月間1,000万回以上再生される星空動画メディア「宇宙のテルコ」。 星空ソムリエの資格をもつ星好きスタッフが、天文の一次情報にあたりながら、知るほど夜空が楽しくなる——そんな話を、やさしい言葉でお届けします。

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