人工衛星はなぜ落ちない?落ち続ける軌道のしくみ

空高くを回り続ける人工衛星。重力ははたらいているのに、どうして落ちてこないのでしょう。じつは衛星もずっと「落ち」続けています。それなのに地面に届かないのは、横にとても速く進んでいるから。今回は「軌道」というふしぎな落ち方の話を、一緒にのぞいてみましょう。

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青い地球と白い雲を背景に、左右へ太陽電池パネルを広げて周回する人工衛星

かんたんな答え

まず結論から

人工衛星はずっと落ちている

衛星にも地球の重力がはたらき、つねに地球へ落ち続けています。それでも地面に届かないのは、横方向にとても速く進んでいるからなんです。落ちた分だけ丸い地面が逃げていくので、いつまでも回り続けます。この「落ち続ける状態」こそが軌道ですよ。

もくじ
  1. 代表的な軌道の早見表
  2. なぜ落ちても当たらないの?
  3. よくある誤解
  4. よくある質問

代表的な軌道の早見表

明るい机の上で、地球儀の近くと遠くに二つの衛星模型を置き、紙の矢印と輪で軌道の違いを示している。
代表的な軌道の高度と地球を一周する時間
ISS(国際宇宙ステーション)高度約400kmを秒速約7.7kmで回り、約90分で地球を一周します。条件がそろえば肉眼でも見えます。
静止衛星高度約36,000kmを24時間で一周します。地球の自転と同じ周期なので、地上からはいつも同じ位置に止まって見えます。

数字はおおよその目安として見てくださいね。高い軌道ほどゆっくり回るため、地球を一周する時間も長くなります。

自由落下する物体と、横速度を持って軌道に乗る衛星を対比した図
図:まっすぐ落ちれば地面へ。横に十分速ければ「落ち続けながら」回り続ける=軌道。

なぜ落ちても当たらないの?

  1. 衛星も重力で落ちている宇宙には重力がない、と思われがちですが、そんなことはありません。ISSが回る高度400kmあたりでも、地球の重力は地上の約9割の強さでしっかりはたらいています。人工衛星にも地球の重力がはたらき、つねに地球へ向かって「落ち」続けているんですよ。重力が消えているわけではないのです。
  2. 横に十分速く動いている衛星はまっすぐ下に落ちるのではなく、地面と平行な向き(横方向)にも、ものすごい速さで進んでいます。低い軌道を回るには、秒速約7.9km(第一宇宙速度)という猛烈な速さが必要になります。時速になおすと約28,000km。東京と大阪のあいだ(約400km)を1分ほどで飛び越えてしまう速さ、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
  3. 落ちる分だけ丸い地面が逃げ、回り続ける落ちて高さが下がるあいだに、横へ進んだ先の地面は丸い地球のぶんだけ遠ざかっています。落ちても落ちても地面に届かず、ぐるりと回り続ける――これが「軌道」です。じつは、これはニュートンが考えた「高い山から大砲を撃つ」という思考実験そのもの。弱く撃てば手前に落ち、十分に速く撃つと地面に当たらないまま一周してくる、というわけです。ふしぎですが、これが宇宙のルールなんです。

よくある誤解

「宇宙には重力がないから、衛星も人も浮いている」わけではない

高度400km付近でも、地球の重力はしっかりはたらいています。衛星が浮いているように見えるのは、機体も中の人も同じように「落ち続けている」から。重力が消えたのではなく、みんなで自由落下しているだけなんですよ。

  • 重力はなくなっていない——衛星も人も、つねに地球へ落ち続けている。
  • 無重力に見えるのは自由落下のため——機体と人が同じように落ちている。
  • 高い軌道ほどゆっくり回る——静止軌道では一周にちょうど24時間かかる。

よくある質問

人工衛星はなぜ落ちてこないのですか?

じつは衛星もずっと「落ちて」います。ただし横方向にとても速く進んでいるため、落ちた分だけ丸い地球の地面が下へ逃げていき、いつまでも地面に届きません。落ち続けながら回り続けるこの状態を「軌道」と呼びますよ。

落ちているのに、どうして地面にぶつからないのですか?

地球が丸いからです。衛星が重力で少し落ちるあいだに、横へ進んだ先の地面も地球のカーブのぶんだけ遠ざかります。落ちる量と地面が逃げる量がつり合うと、衛星は同じ高さを保ったまま地球を回り続けます。

宇宙飛行士がふわふわ浮くのは重力がないからですか?

いいえ。宇宙飛行士は、衛星やステーションといっしょに自由落下しているため、浮いているように見えるだけなんです。重力が消えたのではなく、機体も人も同じように落ち続けているので、体重を感じない「無重力のように見える」状態になります。

静止衛星はなぜ空に止まって見えるのですか?

静止衛星は高度約36,000kmという高い軌道を回っています。高い軌道ほどゆっくり回るため、ここでは地球を一周するのにちょうど24時間かかります。地球の自転と同じ周期で回るので、地上からはいつも同じ位置に止まって見えます。天気予報でおなじみの気象衛星「ひまわり」も、この静止軌道の仲間ですよ。

エンジンを噴かし続けなくても、どうして回っていられるのですか?

宇宙空間は空気がほとんどない、ほぼ真空だからです。地上では空気の抵抗ですぐに止まってしまいますが、抵抗のない宇宙では、一度じゅうぶんな速さを得れば、あとは慣性でそのまま回り続けられます。だから衛星は、ふだんはエンジンを止めたまま何年も地球を回っていられるんですよ。

人工衛星はいつか落ちてくることはありますか?

低い軌道の衛星には、じつはごくわずかに空気の抵抗がはたらいています。長い時間をかけて少しずつエネルギーを失って高度が下がり、やがて大気圏に入って燃え尽きます。ISSも放っておくと高度が下がるため、ときどきエンジンで軌道を持ち上げ直しているんですよ。反対に、静止軌道のような高いところでは、この抵抗がほとんどなくなります。

出典

本記事の数値・定義は、以下の一次情報をもとに記載しています。

この記事を書いた人

コペミル編集部星空ソムリエ

YouTube・TikTokで月間1,000万回以上再生される星空動画メディア「宇宙のテルコ」。 星空ソムリエの資格をもつ星好きスタッフが、天文の一次情報にあたりながら、知るほど夜空が楽しくなる——そんな話を、やさしい言葉でお届けします。

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